「精神科看護」のつらいこと 良いこと 9つ紹介

Body of water during sunset 看護の世界

新型コロナで激変する社会。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は、今、精神科で看護師として働いております。

コロナ拡大で全国の看護師さんが大変な状態であることは報道の通り。

そのように看護師はいろいろと大変な仕事でありますが、その中でも、今私が勤めている「精神科」の看護は、現在コロナ対応の最前線で奮闘して下さっている『一般科』とは、また異なった大変さがあります。

今回は、精神科看護に関心がある方に向けて、私が感じる精神科看護のつらいこと、良いことについて紹介させて頂きたいと思います。

実務にブランクがある看護師資格保有者で「精神科」への再就職を視野に入れておられる方や、一般科から精神科への転科を検討しておられる方への、精神科に対する「一個人の感じ方」の情報提供、というのが今回の記事の目的です。

文字ばっかり並んでいると目にとまりにくいでしょうから、ちょっと抜き書きしておきます。

なお、言うまでもなく、これはあくまで私の極めて「個人的な」感想ですので、その点はくれぐれもご了承願います。

最初につらいことを紹介して、次に良いことを紹介させて頂きます。

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精神科看護のつらいこと

  1. 不穏になった人を抑えたりしなければいけない時がある
  2. 暴言に対応しなければならない時がしばしばある
  3. いろいろな面で忍耐力が必要
  4. 医療技術を学ぶ機会が少ない

一つずつ説明していきます。

不穏になった人を抑えたりしなければいけない時がある

最初、精神科で仕事をして最も驚いたのは、不穏になった人を大勢で押さえつける場面でした。

精神科に入院してこられる方の中には、幻覚や妄想に強くとらわれた統合失調症の方が多くおられます。時に、そのような方の中で、不穏になって危険な状態になってしまう方もおられます。
そのような時には、その方および周囲の方の安全確保のために、大勢のスタッフで押さえつけて「保護室」へ隔離します。

精神科で働くようになった最初の頃、「男性スタッフの方、大至急〇〇病棟へ来てください!」という放送で、その病棟へ駆けつけ、不穏になった患者さんを大勢で押さえつける場面がありました。
その際には、まだ慣れておらず、また私の場合、精神科へ行くまで精神科というものに対しての予備知識が少なかったこともあって、ちょっと度肝を抜かれました。

その後、回数を重ねるたびに少しずつ慣れていきましたが、それでもやはり、いくら病気とはいえ、大勢で、人を押さえつけて鍵のかかる部屋へ運び入れる、というのは、何回やっても気持ちの良いものではありません。

私にとって、精神科看護の中で最もつらいことの一つです。

暴言に対応しなければならない時がしばしばある

これは前記項目につながる内容と言えるかもしれませんが、幻覚や妄想に強くとらわれた統合失調症の方の中には、興奮して暴言を出す方もおられます。
それらは医療スタッフに向けられることも多く、一般的には理不尽以外の何物でもないような、強い暴言を浴びせられる場面も少なくありません。

病気の成せるわざだと頭では分かるのですが、つらいことの一つです。

いろいろな面で忍耐力が必要

精神科へ入院してこられる方は、統合失調症だけでなく、躁うつ病の方や境界性人格障害の方、それに認知症の方もおられます。
それぞれの疾患で、それぞれ特有の精神の歪みを抱えておられるわけですが、そのような方々は不調になると、論理的な話が全く通じなくなってしまいます。
自分特有の世界に入り込んでしまうと、これこれこうだから当然こうなる、という筋道立てた話が出来なくなります。
もうそのなってしまうと、いくら言っても分からない(向こうもそう思っている)状態となり、体は同じ場所に居ながら心は異次元世界へ移動してしまったような状態になってしまいます。

健康な人同士でもそれに似たような状態になることはあるでしょうが、それでも、精神科へ入院してこられる方は、そのレベルが全く異なります。
同じ日本語を話していても、外国語のような感じ。
往々にしてそのような場面では、相手は感情的となり、罵声を浴びせてきます。
話が通じない状態で理不尽な罵声を浴びせられる、というのはキツイものです。

その他の面でも、精神科ではいろんな面でとにかく「忍耐」が必要。これもつらいことの一つです。

医療技術を学ぶ機会が少ない

現代精神科の治療は、カウンセリング等の心理療法や精神療法も行われますが、やはりなんと言っても薬物療法が中心です。
ですので、医療技術を学んだり経験したりする機会は少ないです。

特に私の場合は、不器用なのでそれがより顕著だと言えるのですが、一般科の人ならサラサラッとこなせるような医療処置もとまどったりなかなか出来なかったりします。
正直、コンプレックスもあります。

身体への医療処置に関してスキルアップがしにくいというのは、向上心の強い看護師さんにとっては、精神科看護を選択する際のマイナスポイントと言えるかもしれません。

精神科看護の良いこと

ちょっとネガティブな内容が続いてしまいました。

ここからは、ちょっと気持ちを入れ替えて、ポジティブな面、「私が感じる」精神科看護の良い点を述べていくことと致しましょう。

  • 5. 残業が少ない
  • 6. 一般科よりも処置に振り回されることが少ない
  • 7. 中途採用者にやさしい
  • 8. 男性の存在価値を感じられる
  • 9.「心の筋トレ」で心が鍛えられる

では、これも一つずつ説明していきます。

残業が少ない

精神科の一番の魅力は、何と言っても、やはり他科に比べて「残業が少ない」ということではないでしょうか。

私は、看護学校卒業して所属病院でのお礼奉公が終わった後、「一般科」で6年間程働きました。
その際は残業が当たり前でした。
私の仕事が遅いこともあって、既定の勤務時間内では与えられた業務をこなしきれず、次の勤務者への申し送りが終わった後からやっと記録を書き始める、というのは日常茶飯事でした。

それに対し精神科では、一般科に比べると医療処置が少ないということもあって、だいたい「定時」に勤務を終えることができます。

全国の精神科を調べたわけではないので全ての精神科がそうだと断言はできませんが、少なくとも今私が働いている病院はそうですし、たぶん全国的にもそうなんじゃないかなと思います。

仕事が終わらず遅くまで残って働くということなく、ほぼ定時に上がることができる …私が感じている精神科の最も良いところです。

処置に振り回されることが少ない

前項の内容につながりますが、精神科は、点滴を刺したり抜いたり創傷処置したり、OP出し検査出しに走り回ったり… といった医療処置が一般科に比べると少ないです。
なので、処置に振り回されて、今自分が何をやろうとしていたのか分からなくなった、というような自分を見失うような事態はあまりないと言えるでしょう。
(注:決して医療処置がないわけではありません。医療処置に忙殺されててんてこ舞いするような日も時にあります。相対的に少ないという意味です。念のため。)

一般科に比べると処置に振り回されることが少なく、その分、患者さんとじっくり向き合うことができる、それも精神科の良いところだと思います。

中途採用者にやさしい

これも全国の精神科を調べたわけではないので全ての精神科がそうだと断言はできませんが、精神科には中途採用の看護師さんが多いような気がします。

ブランクのある看護師さんが再就職をするにあたっての大きなハードルの一つには、日進月歩の医療処置・ケアに対応できるか否か不安、というのがあると思います。

前項で述べた如く、精神科にはそうした面の不安に直面する場面が少ないというイメージがあり、そうした面で中途採用者にとっての敷居は低くなっているのではないでしょうか。
それはすなわち、中途採用者への違和感が少ないということ。
これは、中途から入っていく側からすると、特殊な目で見られることが少ないことを意味します。
「中途採用者にとってはやさしい環境」と言えるのではないでしょうか。

それも精神科の良いところ、と私は思います。

男性の存在価値を感じられる

精神科のつらいことの部分で述べましたが、精神科では、興奮・不穏となり危険な状態になってしまった方が出た場合、その方および周囲の方の安全確保のために、大勢のスタッフでその方を押さえつけて保護室へ隔離しなければならないような場面が時に出てきます。
そのような時には、ヒョロヒョロもやしのような私でも、ただ男だと言うだけで招集されて、微力ながらそのお手伝いをさせて頂きます。

以前一般科で働いた時には、男の看護師ということで役に立たない場面が時々ありました。
看護の世界は女性中心の世界で、男には居心地の悪い時もしばしばあったものでした。

しかし、精神科では「男」ということが役に立つ場面があります。
というより、男なしでは難しい場面が多々あります。

女性中心の「看護の世界」にあって、男性の存在価値を感じられる、というのは、男の私にとって有難いこと(良いこと)です。

「心の筋トレ」で心が鍛えられる

精神科のつらいことの中で「忍耐力」が必要ということを述べました。
理不尽な暴言を浴びせられたり、認知症の方の周辺症状に振り回されたり…

つらいこと、ネガティブなこととしてそれを述べましたが、しかしそれは、見方を変えるならば、日々、心を鍛える機会を与えてもらっている、という見方も出来なくはないわけです。
当項目の表題に掲げたように「心の筋トレ」の機会を与えてもらっている、と受け止めることも出来るわけです。
実際、妄想などの精神症状に日常的に接していると、まだまだ受け止めきれずに振り回されてはいますが、「多少は」慣れてくるものです。

私も、精神科で働き始めた当初は、とても心がついていかないように感じていたものです。
しかし、日を重ねるごとに、慣れが出てきて、今は、最初のころに比べるとだいぶ振り回され度が少なくなったのではないか、と思っています。

これこそ、まさしく「心の筋トレ」。

これは、単なる個人的な受け止め方の問題で、周りにむかって「良いこと」です、と大きな声で言える種類のものではないのかもしれません。
しかし私は、あえて、「心の筋トレ」をする機会を与えてもらえる、それが精神科看護の良い点だ、と言いたいと思います。

まとめ

最後にもう一度、私が感じる「精神科看護のつらいこと 良いこと」をまとめて記載しておきます。

精神科看護のつらいこと

  1. 不穏になった人を抑えたりしなければいけない時がある
  2. 暴言に対応しなければならない時がしばしばある
  3. いろいろな面で忍耐力が必要
  4. 医療技術を学ぶ機会が少ない

精神科看護の良いこと

  • 5.残業が少ない
  • 6.一般科よりも処置に振り回されることが少ない
  • 7.中途採用者にやさしい
  • 8.男性の存在価値を感じられる
  • 9.「心の筋トレ」で心が鍛えられる

特殊な目で見られがちな「精神科看護」。
私もその中に入るまではそのような目で見ていました。

しかし、実際にその中で仕事するようになって、精神科へ入院してくる人も、私達と同じようなごく普通の人たちが圧倒的に多いことを知りました。
ただその中で、心が崩れて社会的に適応できなくなり、周囲に迷惑をかけたりして問題を抱えて入院治療が必要となっただけ。
精神科へ入院してこられる方も、実は、ごく普通の人たちである、ということを実感させられました。(もちろん完全に異質な方もおられますが…)

人間に対する偏見の一部を取り除くことが出来たのは、精神科でお仕事をさせて頂くようになったお蔭かなぁ、と思っています。

ネガティブな意見も多く述べてきましたが、精神科への再就職を考えておられる方、一般科から精神科への転科を検討しておられる方、人間の幅を広げるという意味でも、一度「精神科看護」を経験してみるというのは「アリ」じゃないのかな、私はそんなことを思ったりもします。

それらの検討材料として、上記、私個人の感じ方が多少なりとも参考になれば幸いです。

ではでは、今回はこのへんで。

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