ふらふら彷徨う「さまよい人」です。
新米天理教教会長が「葬儀」について学習する記事の第2弾です。
前回は、神道葬儀(神葬祭)の前儀について学習しましたので、今回は、神道葬祭(神葬祭)の本儀について学習したいと思います。
前回に引き続き、西牟田崇生編『家庭の祭祀事典』(国書刊行会)「神道葬祭(神葬祭)の祭儀」を教材としています。
神道葬祭(神葬祭)本儀
産土神社に帰幽奉告の儀
人の霊魂はその死と共に産土神の許に帰るという「産土信仰」から、忌服に関わりない者を喪家(喪中の家)の使者として産土神社に遣わし、誰某の帰幽(死没)のことを連絡し、産土神社においてはその使者の参列の下に、直ちにその旨の奉告祭を斎行する。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀辞典』P,211~212)
これに先立って、家族の中に死没者が生じた際には、出来る限り忌服に関わらない人が、まず神棚および祖霊舎(御霊舎)に帰幽の旨を奉告する。神棚に家族の誰某の帰幽を奉告する拝礼を済ませた後、扉を閉じて白紙を張ってその前面を覆い、家族の者は当分の間(概ね五十日祭を経た忌明後の清祓を済ませる頃まで)神棚の拝礼を取りやめる。引き続き祖霊舎(御霊舎)に祀られた祖霊に対しても、家族の誰某の死没奉告の拝礼を行う。
本儀に入る前にまずは先輩先生方の御霊に奉告をする、という感じでしょうか
- 忌服に関わりない者を喪家(喪中の家)の使者として産土神社に遣わし、誰某の帰幽(死没)のことを連絡する
- 産土神社においてはその使者の参列の下に、その旨の奉告祭を斎行する
- これに先立って、家族の中に死没者が生じた際には、出来る限り忌服に関わらない人が、まず神棚および祖霊舎(御霊舎)に帰幽の旨を奉告する
- 神棚に家族の誰某の帰幽を奉告する拝礼を済ませた後、扉を閉じて白紙を張ってその前面を覆い、家族の者は当分の間(概ね五十日祭を経た忌明後の清祓を済ませる頃まで)神棚の拝礼を取りやめる
通夜祭
通夜祭は、古代の葬送儀礼における「殯斂(もがり)」の遺風であり、夜を徹して故人の蘇り(よみがえり)を願う祭儀である。命の果てた後、葬儀を執り行うまでの間、喪主以下家族・親族一同が、故人の側に控えて生前同様の礼を尽くし、心を込めて鄭重に奉仕すべき神道葬祭(神葬祭)の諸祭儀中でも殊に重要な祭儀であり、葬場祭(いわゆる告別式)の前夜に行うのが本義である。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀辞典』P,212~213)
本来の通夜祭とは、故人の家族・親族一同が終夜に亘って柩の側に集まり控えて、その面影を慕いつつ、その功績を称え偲び、再び霊魂が帰り来て生命が蘇ることを、ひたすら祈り願うために行われる祭儀であり、生饌ばかりでなく故人が生前好んだ品々を御饌(常饌)として供え、誄歌を奏でて故人を追慕する。従って非常に厳粛かつしめやかな祭儀であるが、今日、葬儀の前夜祭的な感覚で捉えられるようになってしまっているのは、甚だ遺憾なことである。
神道では、本来、遷霊祭とは別に「通夜祭」という祭儀があるのですね
この著書で初めて知りました
お道では通夜祭という言葉は聞きませんし、仏式のイメージからして、通夜祭と聞くと遷霊祭のことかと思ってしまいました
- 通夜祭は、古代の葬送儀礼における「殯斂(もがり)」の遺風=夜を徹して故人の蘇り(よみがえり)を願う祭儀
- 命の果てた後、葬儀を執り行うまでの間、喪主以下家族・親族一同が、故人の側に控えて生前同様の礼を尽くす
- 葬場祭(告別式)の前夜に行う
- 本来の通夜祭とは、故人の家族・親族一同が終夜に亘って柩の側に集まり控えて、その面影を慕いつつ、その功績を称え偲び、再び霊魂が帰り来て生命が蘇ることを、ひたすら祈り願うために行われる祭儀
- 生饌ばかりでなく故人が生前好んだ品々を御饌(常饌)として供え、誄歌を奏でて故人を追慕する
遷霊祭(移霊祭)
遷霊祭は、故人の御霊を霊璽(御霊代)に移し留める祭儀で、「移霊祭」とも称する。霊璽に移し留められた故人の御霊は、やがて祖霊の中に加わって一家の祖霊舎(御霊舎)に安置され、末永く家の守護神として祀られ、御霊が遷し離された後の遺体は、程なく墓所に埋葬されることになる。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀辞典』P,213)
遷霊祭は、神道葬祭(神葬祭)の意義付けを考える際に、その前後における意識が二分されるような、非常に需要な祭儀といえるのではなかろうか。すなわち、遷霊祭に至る間の諸祭儀には、再び霊魂が帰り来て故人の生命が蘇ることをひたすら願うという意識が強く窺われるのに対して、遷霊祭を行って故人の御霊を霊璽に遷し留めることは、ある意味ではその人の死を確定することでもあり、これ以降の諸祭儀は、遺体を永遠の安住の地たる墓所に葬るための祭儀へと、その性格が変化すると考えることができる。
遷霊祭は、本来発柩に先立って夜間に灯火を滅した浄暗裡(真っ暗闇の清浄な中)に斎行されるものである。出棺が夜間に行われる場合には問題はないのであるが、今日の葬儀の殆どは、通夜祭以外の祭儀が昼間に行われているところから、遷霊祭は出棺の前夜に通夜祭に引き続いて行われている例が少なくない。
遷霊祭=みたまうつし
神道における葬儀の「要」とも言える祭儀ですね
- 遷霊祭は、故人の御霊を霊璽(御霊代)に移し留める祭儀 → 「移霊祭」とも称する
- 霊璽に移し留められた故人の御霊は、やがて祖霊の中に加わって一家の祖霊舎に安置され、末永く家の守護神として祀られる
- 御霊が遷し離された後の遺体は、程なく墓所に埋葬されることになる
- 遷霊祭は、神道葬祭(神葬祭)において、その前後における意識が二分されるような、非常に需要な祭儀
- 遷霊祭に至るまでの諸祭儀には、再び霊魂が帰り来て故人の生命が蘇ることをひたすら願うという意識が強く窺われるのに対して、遷霊祭を行って故人の御霊を霊璽に遷し留めることは、ある意味その人の死を確定すること
- これ以降の諸祭儀は、遺体を永遠の安住の地たる墓所に葬るための祭儀へとその性格が変化する
- 遷霊祭は、本来、発柩に先立って、夜間に灯火を滅した浄暗裡(真っ暗闇の清浄な中)に斎行されるもの
- 今日の葬儀のほとんどは通夜祭以外の祭儀が昼間に行われているところから、今日の遷霊祭も、ほとんどが出棺の前夜に通夜祭に引き続いて行われている
発柩祭(はっきゅうさい)(出棺祭・棺前祭)
発柩祭は、葬場において葬送の本儀を行うに先立って、柩が喪家を出発せんとする際に、そのことを柩前に告げるために行われる祭儀であり「出棺祭」とも「棺前祭」ともいわれ、故人にとっては、数多くの想い出のある住み慣れた我が家との別離の儀式でもある。その後ただちに霊柩を奉じ葬列を整え、葬場に向けて出発する。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀辞典』P,213~214)
出棺に際して、故人の御霊を遷し留めた霊璽は、葬場や火葬場には持参しない。
会館での葬儀が増えた現代においては、発柩祭というのはほとんど見られないように思われます
- 発柩祭は、葬場において葬送の本儀を行うに先立って、柩が喪家を出発せんとする際に、そのことを柩前に告げるために行われる祭儀
- 故人にとっては、住み慣れた我が家との別離の儀式
- その後ただちに霊柩を奉じ葬列を整え、葬場に向けて出発する
- 出棺に際して、故人の御霊を遷し留めた霊璽は、葬場や火葬場には持参しない
発柩後(はっきゅうご)祓除(はらえ)の儀
発柩後祓除の儀は、古来の「後祓(あとばらえ)」といわれたもので、発柩の後に通夜祭以来の調度を取り去って、家中の火を改め、各部屋を清掃してから、家に留まった家族・親族などを始め、家中の各部屋や家の敷地内を隈なく祓い清める儀式である。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀事典』P,214)
その後、仮御霊舎の調度を整えて、葬場祭・火葬祭・埋葬祭などを終えて帰宅した後に執り行われる帰家祭の準備に当たる。
会館での葬儀が増えた現代ですので、これもほとんど見られないように思われます
- 発柩後祓除の儀 =古来の「後祓(あとばらえ)」といわれたもの
- 発柩の後に通夜祭以来の調度を取り去って、家中の火を改め各部屋を清掃して、家に留まった家族親族などを始め、家中の各部屋や家の敷地内を隈なく祓い清める儀式
- その後、仮御霊舎の調度を整えて、葬場祭・火葬祭・埋葬祭を終え帰宅した後に執り行われる帰家祭の準備に当たる
葬場祭(告別式)
葬場祭(告別式)は、故人の遺体に対して最後の決別を告げる祭儀で、喪主以下家族・親族はもとより近親者や会葬者一同が、こぞって故人の在りし日の面影を慕いその威徳を称賛する。人生儀礼の最終を飾る最も厳粛な儀礼である。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀事典』P,214~215)
喪家から葬列を整えて新たに設けられた葬場に至り、そこで本儀を執り行うのが本来の慣わしであるが、今日は常設の斎場で行われる場合が多くなったが、もちろん喪家において行うことも差し支えないし、その事例も少なくない。
斎儀次第の中で、斎主が奏上する祭詞(葬祭において奏上される祝詞)には、故人の経歴や功績、人柄や言動などがに語られ、また弔辞の奉呈や弔電の奉読が行われて、故人の足跡が称えられ、その面影を偲びつつ厳粛裡に最後の決別が告げられる。
やがて葬場祭(告別式)が終了し参列者・会葬者の退出した後、改めて列次を整えて、墓所もしくは火葬場に向かう。(今日の葬儀では殆どが「火葬」であるため、埋葬のために葬場から直接墓所に向かう「土葬」の例は極めて少ない。)
今日、告別式と呼ばれている、いわゆる葬儀のメイン儀式ですね
- 葬場祭(告別式)は、故人の遺体に対して最後の決別を告げる祭儀
- 喪家から葬列を整えて新たに設けられた葬場に至り、そこで本儀を執り行うのが本来の慣わし
- 今日は常設の斎場で行われる場合が多くなったが、喪家において行うことも差し支えない
- 斎儀次第の中で斎主が奏上する祭詞には、故人の経歴や功績、人柄や言動などが詳細に語られる
- 弔辞の奉呈や弔電の奉読も行われ、故人の足跡が称えられ、その面影を偲びつつ最後の決別が告げられる
- 葬場祭(告別式)終了し参列者・会葬者退出後、改めて列次を整えて、墓所もしくは火葬場に向かう
火葬祭
火葬祭は、埋葬に先立って遺体を火葬に付すに際して行われる祭儀であり、火葬の儀を終了後直ちに遺骨を奉じて墓所に至り、埋葬を行う。事情によって当日中に埋葬できない場合には、出来るだけ早い機会に埋葬することが望ましい。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀事典』P,216)
最近は、火葬が済んだ後に遺骨を家に持ち帰り、五十日祭が過ぎてから埋葬する向きが少なくないが、墓所の準備がなかったり、遠方にあるような場合はやむを得ないであろうが、火葬後直ちに遺骨を埋葬することによって、遺骨も速やかに安定するであろうし、葬儀終了の一つのけじめともなる。
今は、五十日祭が過ぎてから埋葬するのが当然のようになっていますが、昔は火葬後すぐに遺骨を埋葬していたのでしょうか
- 火葬祭は、埋葬に先立って遺体を火葬に付すに際して行われる祭儀
- 火葬の儀終了後、遺骨を奉じて墓所に至り、埋葬を行う
埋葬祭
埋葬祭は、葬場祭(告別式)の後に、再度列次を整えて、喪主以下の家族・親族や故人と特別に縁故のある人々などが、霊柩に付き従って墓所に至り、柩を埋葬し、その後に行われる祭儀である。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀事典』P,215~216)
墓所を祓い清めた後に、土葬の場合には遺体を納めた柩をそのまま、火葬の場合には遺骨を埋葬する。
昔は、葬場祭(告別式)に続けて埋葬していたのでしょうか
- 埋葬祭は、葬場祭(告別式)の後に、再度列次を整えて、喪主以下の家族・親族や故人と特別に縁故のある人々などが、霊柩に付き従って墓所に至り、柩を埋葬し、その後に行われる祭儀
- 墓所を祓い清めた後に、土葬の場合には遺体を納めた柩をそのまま、火葬の場合には遺骨を埋葬する
帰家祭
帰家祭は、埋葬の儀が修了し喪主以下一同が帰家(帰宅)した後、仮御霊舎の霊前において、葬儀が滞りなく終了したことを奉告する祭儀である。
(西牟田崇生編著『家庭の祭祀事典』P,216)
帰家に先立って、葬儀に関連した一同(一連の葬儀儀式に関与した神職や喪主以下の家族・親族など)は、家の窓口において手水の後、大麻・塩湯による祓い清め(帰家清祓)を行う。
この帰家祭以降に執り行われる神道葬祭(神葬祭)後儀の諸祭儀は、仮御霊舎の霊前において営まれる。
一連の神道葬祭本儀を終えて帰宅したら、死のケガレを祓う、ということなのでしょうね
- 帰家祭は、埋葬の儀が修了し喪主以下一同が帰家(帰宅)した後、仮御霊舎の霊前において、葬儀が滞りなく終了したことを奉告する祭儀
- 帰家に先立って、葬儀に関連した一同は、家の窓口において手水の後、大麻・塩湯による祓い清め(帰家清祓)を行う
- この帰家祭以降に執り行われる神道葬祭(神葬祭)後儀の諸祭儀は、仮御霊舎の霊前において営まれる
まとめ
神道葬祭(神葬祭)本儀
- 産土神社に帰幽奉告の儀
- 通夜祭
- 遷霊祭(移霊祭)
- 発柩祭(はっきゅうさい)(出棺祭・棺前祭)
- 発柩後(はっきゅうご)祓除(はらえ)の儀
- 葬場祭(告別式)
- 火葬祭
- 火葬祭
- 帰家祭
以上、長くなってしまいましたが、神道葬祭(神葬祭)の本儀について、西牟田崇生先生『家庭の祭祀事典』という著書を通して勉強させて頂きました。
今回の「本儀」の部分が、神道葬祭のメインだと言って良いと思います。
天理教の葬儀に関する勉強として、そのベースとなっている『神道葬祭 (神葬祭) 』について学習しましたが、会館での葬儀が広く普及した現代ではほとんど行われていない祭儀が多くあるのに驚かされました。
他の教派神道さんや神社本庁さんではどうなのでしょうね。
詳しく調べてはいませんが、おそらく似たような状況なのではないでしょうか。
「後儀」については、次回で学習したいと思います。
ではでは、今回はこのへんで。
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